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2. 脳波…Electroencephalogram:EEG

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異常脳波[編集]

異常脳波には非突発性異常と突発性異常の2つがしられている。

突発性の意味とは持続的な基礎律動の異常ではなく、突然始まり、突然終わる一過性の波形という意味である。


非突発性異常[編集]

非突発性異常は主に脳波の基礎律動と振幅の異常であるが実際問題として最も重要なのは徐波である。

α波の徐波化

基礎律動の徐波化は多くの場合は脳の機能低下を示している。

前述のように分布を確認することで原因を推定できることもある。

開眼や音刺激を加えてもα波の出現が悪く、徐波が出現する場合は大脳皮質の機能低下と考えられる。

成人では安静時にδ波が出現すれば明らかに異常であり、θ波でもはっきり目立つ程度に出現すれば軽度の異常である。

異常速波

高振幅速波が基礎律動となる場合がある。

薬剤性が多いが、内分泌疾患などでも起りえる。

基礎律動として側波が異常脳波としてみなされるのは異常に高振幅であるときのみである。

α波をはじめ正常の構成成分の異常

局所性振幅の減少や消失、局所性の振幅の増加、局所性の徐波化、位相の乱れなどが認められることがある。

障害部位においては覚醒時脳波(α波、徐波、速波など)の振幅が低下したり増大したりする。

睡眠時脳波でも速波、紡錘波、徐波、K複合波などが患側では振幅が減少したり、欠如する。

こういった現象をlazy activityという。

組織化不良

基礎律動の周波数変動は1Hz以内が正常であり、それを超えると脳波は不規則に見える。

このとき組織化不良という。

局所性徐波

半球性に白質ないし皮質が障害された場合には持続性多形性δ活動(PPDA)が出現する。

PPDAは局所性脳病変のマーカーである。

振幅、周波数、持続性、刺激に対する反応性が障害程度の指標となる。

持続性徐波は重度脳障害を、間欠的徐波は軽い脳障害を示唆する。

反応性がない徐波はより障害が強い。

広汎性徐波

広汎性に出現する不規則な徐波は半球性の白質および皮質を含む大きな病変で観察される。

両側性同期性徐波

前頭部間欠性律動性δ活動(FIRDA)に代表される律動性活動がある。

かつては上部脳幹、間脳、視床正中部の病変による投射性リズムと考えられていた。

近年は皮質および皮質下灰白質の病変が主な原因とされている。

周期性脳波パターン

PLEDsは一側性に出現する高振幅複合波でありヘルペス脳炎や重篤な急性脳血管障害で認められる。

広範な皮質興奮性の増大とそれに続く皮質下で発生する抑制が周期性パターンの原因とされている。

皮質灰白質での機能異常による急激な神経発射が起こった後、長く持続する過分極が生じてニューロンが不応期に入り周期性が形成される。

周期性のトリガーは皮質下と考えられている。

バーストサプレッションは深麻酔時あるいは低酸素脳症や広範な頭部外傷でみられる。

これは視床からの入力が皮質ニューロンの過分極により遮断されるが、内因性ペースメーカーにより視床皮質ニューロンが再活動して皮質活動が再開して周期的なパターンを呈すると考えられている。


突発波[編集]

突然始まり、急速に最大振幅に達し、突然終わるような出現様式をとる脳波を突発波という。

突発波の判読で最も重要なのはてんかんであり、てんかんの診断、分類、治療効果判定に脳波は行われることがある。

突発波の異常には波形の異常、出現の仕方、出現の場所などの性状が知られている。

波形の異常

棘波、鋭波、棘徐波、多棘徐波などが知られている。

棘波(spike)とは持続20msec - 70msec程度の尖った波形であり、鋭波(sharp wave)とは持続70msec - 200msec程度の振幅が大きな尖った波である。

棘波ひとつに徐波ひとつが組み合わさると棘徐波複合(spike-and-slow-wave complex)といい、鋭波ひとつと徐波ひとつでは鋭徐波複合(sharp-and-slow-wave complex)という。

多棘複合、棘徐波複合といったものも存在する。

出現の仕方

単発、2から3個連なって、群発(数秒続く)といった出現の仕方が知られている。

持続的、頻発、散発(sporadic)、律動性(rhythmic)、多律動性、非律動性、周期性、突発性、両側同期性、非同期性といった表現も用いられる。

出現場所

焦点性、半球性、全般性などが知られている。

広域性、広汎性、局在性、一側性、両側性、対称性、非対称性といった言葉もつかわれる。

これらは左右差などに注目するのが重要である。


突発性異常[編集]

突発性脳波異常は、棘波ならびに鋭波と突発性律動波とに大別される。

棘波(spike)

棘波は突発性脳波異常の最も基本的な形であり、持続が20msec以上70msec未満すなわち1/50〜1/14秒で急峻な波形をもち、背景脳波から区別される。

前述のように棘波はその出現様式によって散発性と律動性にバースト(群発)を形成することがある。

棘波は皮質ニューロンの過同期性発火をあらわすものである。

てんかん患者の場合は棘波成分は最も特異的な発作発射と考えられている。

孤立性の棘波がかなり長い間隔をおいて散発するばあいは、それはてんかん原焦点の局在を示すだけであり臨床症状は出現しないのが普通である。

棘徐波複合(spike and wave complex)

棘波に持続200〜500msecの徐波が続いて現れる場合は棘徐波複合という。

棘徐波複合の発生機序に関しては不明であるが徐波は抑制過程を現し、棘波に表現される強い興奮過程の発現に対して、ただちにこれを抑制しようとする生体の防御機構が働くために棘波に続いて徐波が出現するという考え方もある。

棘波単独で出現するよりもてんかん原損傷が広範であることが多い。

局在性棘徐波複合、全般性(広汎性)棘徐波複合、多棘徐波複合などが知られている。

局在性棘徐波複合は焦点性を示す。

全般性棘徐波複合には欠神発作の3Hz棘徐波律動などの有名な波形も含まれる。

多棘徐波複合にはミオクロニー発作との関連も知られている。

鋭波(sharp wave)

棘波に似ているが、持続が70msec以上200msec未満すなわち1/14〜1/5秒の波形を鋭波という。

棘波との意義の大差はない。

なぜ持続が棘波より長いかということにかんしては棘波に比べてニューロンの同期が不完全であるという考え方がある。

同期が不完全になるには2つの機序が知られている。

第1にはその部位が原発焦点であっても、空間的にてんかん原損傷部位が広い場合がある。

この場合は広い領域にある多数のニューロンが同期するのに鋭波よりも時間がかかると考えられる。

第2に原発焦点が対側半球、皮質深部、皮質下諸核などにあって、そこから伝播してくる神経衝撃によって当該皮質部位に鋭波が誘発される場合は、神経衝撃の時間的分散が増大し、持続が長くなると考えられる。

鋭徐波複合(sharp and slow wave complex)

鋭波に徐波が引き続いて形成される場合は鋭徐波複合という。

鋭徐波複合は比較的広いてんかん原損傷が存在する部位から記録される。

突発律動波(paroxysmal rhythmic activity)

棘波や鋭波を含むが波形は、散発性、孤発性に出現する場合も律動的に反復する場合も脳波的には発作発射である。

棘波や鋭波を含まない場合は振幅が大きく、背景脳波から際立った律動性群発(律動性バースト)をなして出現する場合は発作発射とみなされる場合があり突発律動波という。

3Hz、6Hzの徐波の群発、10Hzの高振幅の群発、速波の群発などが知られている。


てんかん発作と脳波の対応[編集]

発作名 発作時脳波 非発作時脳波

定型欠神発作 広汎性3Hz棘徐波複合 広汎性3Hz棘徐波複合(短い)

非定型欠神発作 広汎性遅棘徐波複合 広汎性遅棘徐波複合他

ミオクロニー発作 広汎性多棘徐波複合 広汎性多棘徐波複合

強直発作 広汎性漸増律動 不定

強直間代発作 広汎性棘波、棘徐波 広汎性棘徐波複合など

部分発作 局在性棘波律動 局在性棘波、棘徐波、徐波あるいは徐波律動(出現しないこともある)

その他、有名なものとしてWest症候群のヒプスアリスミアやLennox症候群非発作期の2Hz前後の鋭・徐波複合、irregularな1.5Hz - 2.5Hzのsharp-and-slow-wave-complexなどが知られている。


病的意義の乏しい突発性活動[編集]

下記に述べるものは病的意義に乏しい。偽性てんかん発作波ともいわれる。

6&14Hz陽性棘波

自律神経症状を示す、視床あるいは視床下部てんかん患者の睡眠第1段階または第2段階で認められると報告されているが、健常者でも認められるという報告もある。

正常から境界の所見と考えられる場合が多い。国際学会では病的意義は確立していないとしている。

小鋭棘波(SSS・BETS)

入眠期、軽睡眠期に単発性の小棘波が出現することがあり小鋭棘波といわれた。

てんかんとの関連がはっきりしないため良性てんかん型発射(BETS)ともいう。

6Hz棘徐波複合(ファントム棘徐波)

欠神発作で認められる広汎性3Hz棘徐波複合を小型化したような波形であることからファントム棘徐波とも呼ばれる。

内因性精神病、特に統合失調症との関連も提唱されている。

しかしこれも健常者でも認められる。

睡眠第1期で認められることが多いが、過呼吸や光刺激で賦活される。

律動性中側頭部放電(RMTD)

精神運動発作異型ともいう。

うとうと状態の時に側頭部、とくに側頭中部を中心に出現する4〜7Hzのθ波の群発である。

複雑部分発作(精神運動発作)で認められる方形波に似ているため精神運動発作異型と言われたが、てんかん性異常波ではない。

群発の持続は10秒以上で一側性または交代性に出現する。

成人潜在性律動性脳波発射(SREDA)

両側または一側の頭頂、側頭部優位に比較的高振幅の4〜7Hzの徐波または鋭波様活動が周波数を変えながら律動的に出現し数十秒から数分間持続するパターンであり、この間臨床症状を伴わない。

臨床的意義は乏しいと考えられている。

ウィケット棘波

頭頂部鋭波

μ律動

覚醒や傾眠時に一側または両側の中心・頭頂部に出現する9〜11Hzの律動波

後頭部陽性鋭一過波(POSTs)

ブリーチリズム

骨欠損の場合にμ律動様の波形が目立って出現することがありブリーチリズムといわれる。


脳波の賦活[編集]

限られた検査時間内で効率よく異常波を誘発・観察するため、主に以下の賦活法が用いられる。

開閉眼賦活法

安静閉眼時に開眼10秒後に閉眼させる。

おもにαブロック(α attenuationまたはα blocking)をみるための賦活法である。

αブロックは視床と皮質反響回路の脱同期によるものと考えられている。

一側で開眼によるαブロックが欠如した場合はBancaud現象といい半球の機能異常が示唆される。

入眠期に開眼させると覚醒度があがり逆にα波が出現する。徐波があったり、反応性が低い場合は病的意義も高くなる。

過呼吸賦活法(HV)

1分間に20回 - 30回の速さで3分 - 4分間連続して過呼吸を行わせる方法である。

過呼吸によって安静時に見られなかった徐波が出現したり、振幅が大きくなることがある。

このような変化をbuild-upという。

10歳以下ではbuild-up自体に病的な意義がないことも多い。

過呼吸を中止し1分以内にbuild-upが消失しなかったらそれも所見である。

過呼吸を中止すると徐波が一度減少、消失し再び徐波化する場合をre-build upという。

build-up、re-build upともにもやもや病などウィリスの大動脈輪障害における所見と考えられている。

光刺激賦活法(PS)

反復光刺激にて後頭葉の突発波を誘発させる方法である。

後頭葉に光刺激の周波数に一致した、あるいは調和した脳波が出現し光駆動といわれる。

睡眠賦活法

睡眠によって突発波誘発させる方法である。

自然睡眠で行う場合と薬物により睡眠を導入する場合もある。


意識障害の脳波[編集]

脳波所見と意識障害の程度に関してはある程度相関が認められる。

障害の程度 刺激への脳波反応 基本所見

軽度 あり 正常基礎律動あり

正常基礎律動の徐波化

びまん性間欠性徐波の出現

IRDA (intermittent rhythmic dekta activity)

三相波

びまん性持続性多形性徐波

周期性パターン

α昏睡

低振幅持続性徐波

burst suppression

background suppression pattern(

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