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意識障害で特徴的な波形[編集]
延髄障害では脳波は正常であるが橋や中脳の障害では紡錘波や高振幅不規則徐波が出現する。
間脳障害では高振幅不規則徐波が出現する。
α昏睡
脳幹障害、低酸素脳症、薬物中毒で認められる。
8〜12Hzのα波が優位であり昏睡初期に見られることが多い。
脳幹障害によるものは後頭優位にα波が出現するが低酸素脳症では広汎性かつ前頭部優位の傾向がある。
予後が不良な例が多い。
β昏睡
全誘導にわたる低振幅速波が特徴的である。
椎骨脳底動脈の閉塞、脳幹部の出血の際に認められる。
薬物中毒での出現例の報告もある。
病変部位はα昏睡と同様であり、なぜ脳波所見が異なるのかは不明。
θ昏睡
意識障害時に前頭部または前頭、中心部優位に出現するθ波を主成分とした脳波所見である。
視床網様体と脳幹網様体の一方または両方の破壊で出現すると考えられている。
δ昏睡
このパターンの脳波が最もよく認められる。
脳波所見と意識障害の程度が相関する。
脳炎、代謝障害、中毒、低酸素の場合は脳幹網様体の直接障害により。
占拠性病変の場合は脳圧亢進による二次的な網様体の機能異常でおこるとされている。
三相波
当初は肝性脳症で認められると報告されたが、その他の病態でも出現する。
徐波が主体の脳波であり、陰−陽−陰の三相の波がほぼ同期し、頭部前方優勢に現れる。
頭部前方から後方にかけて波に時間のずれが見られる。
またバーストや群として現れ、振幅の減衰や抑圧が認められることもある。
PLEDs
棘波、鋭波、あるいは複合波が1秒 - 2秒の間隔で片側性に繰り返し現れる場合をPLEDs(プレズ)という。
両側に認められる場合をBiPLEDsという。
てんかんの脳波[編集]
てんかんの研究は臨床脳波学における中心課題の一つであり脳波が最も威力を発揮するのもてんかんの領域である。
国際抗てんかん連盟(ILAE)のてんかんおよびてんかん症候群の1989年分類で本稿は説明する。
1989年分類ではてんかんをまず全般てんかん(全般発作をもつてんかん)と局在関連(部分、焦点)てんかん(部分発作あるいは焦点発作をもつてんかん)に分ける。
他方、病因によって本態性(原発性)てんかん、症候性てんかん、潜在性てんかんに分け、両要因を組み合わせて診断する。
部分発作[編集]
部分発作とは最初に現れる臨床的ならびに脳波的変化が、一側あるいは両側半球の一部に限局した解剖学的あるいは機能的ニューロン系の賦活が起こっているいることを示している発作である。
意識が障害されないときは単純部分発作に分類し、意識が障害されるときは複雑部分発作に分類する。
単純部分発作[編集]
単純部分発作は焦点局在部位によって、運動徴候をともなうもの、自律神経症状をともなうもの、体性感覚症状あるいは特殊感覚症状を伴うもの、精神症状を伴うものに分類される。
単純部分発作の発作時脳波は対応する皮質機能局在領野に始発する局在性反対側性発射であるが頭皮上から常に記録できるとは限らない。
発作発射(seizure discharge)は棘波の律動的発射の場合もあり、それより遅い種々の周波数の突発性律動波であることもありえる。
臨床上単純部分発作であっても発作時あるいは発作間欠時に脳波上に焦点性突発波がみられない場合は少なくない。
単純部分発作の間欠期の脳波は簡単にいうと局在性反対側発射である。
焦点発作の部位別の出現頻度では側頭前部焦点、半球性、側頭部、多発性、後頭部、頭頂部、前頭部の順に認められる。
Jasperによる1954年の検討では単純部分発作の焦点性発作性脳波異常は3つに分類することができる。
局在性表在性皮質焦点
頭皮上長径3〜4cmの範囲内に散発性の持続の短い棘波が出現し、他の領域にはほぼ正常な脳波が認められる場合には表在性の皮質焦点が想定される。
埋没焦点と二次性両側同期
傍矢状焦点(一側大脳半球の内側)、基底部焦点(大脳半球の下面)、大脳内焦点などが知られている。
広汎性てんかん原領域
複雑部分発作[編集]
複雑部分発作は意識障害を伴い、あとに健忘を残す発作である。
単純部分発作ではじまり、途中から意識障害を起こす場合と最初から意識障害を伴う場合がある。
精神運動発作とほぼ同義であるが一部重ならない点もある。
複雑部分発作はふつうは側頭部あるいは前頭、側頭部の皮質、皮質下領域(嗅脳、辺縁系を含む)の一側性または両側性の損傷によっておこる。
側頭葉てんかんとの関連が重要である。
側頭葉てんかんでは発作発射が側頭葉皮質、島などの皮質から辺縁系(海馬、扁桃体)にいたる投射路を限局性に侵襲すると単純部分発作、すわなち精神発作(錯覚、幻覚)などが出現する。
これを外側側頭葉発作という。
発射が辺縁系に広がると複雑部分発作とくに自動症を伴うことになる。
これを扁桃体・海馬発作という。
複雑部分発作の発作間欠期の脳波は一側性あるいは両側性の、ふつうは非同期性の焦点があり、焦点はふつうは側頭部あるいは前頭部に出現する。
発作時脳波は一側性の、あるいは両側性の発射で広汎性あるいは側頭部、側頭・前頭部に焦点性に出現する。
二次性全般化[編集]
二次性全般化発作は部分発作から二次的に全般化した発作であり、主に現れる発作は強直間代発作である。
二次性全般化発作は単純部分発作から強直間代発作が起こる場合、複雑部分発作から強直間代発作が起こる場合、単純部分発作から複雑部分発作を経て強直間代発作となる場合の3パターンが考えられる。
単純部分発作か複雑部分発作か明確に区別できない場合もある。
全般発作[編集]
全般発作は最初の臨床的徴候が、発作開始時に両側の半球が侵襲されているいることを示す発作である。
意識は障害されることがあり、この意識障害が発作開始時の症状であることもある。
運動現象は両側性である。
発作時脳波像は発作開始時両側性であり、これはおそらく両側半球に広汎に広がっているニューロン発射を反映している。
全般性てんかんはてんかんの国際分類では特発性で発症が年齢依存性のもの、潜在性あるいは症候性のもの、症候性のものの3つに分かれる。
特発性で発症が年齢依存性のものには欠神てんかん、若年欠神てんかん、ミオクロニーてんかん、大発作てんかんなどが含まれる。
症候性のものにはウエスト症候群、レノックス症候群、ミオクロニー・失立てんかん、ミオクロニー欠神てんかんが含まれる。
てんかん発作の国際分類では全般発作は欠神発作(定型、非定型)、ミオクロニー発作、間代発作、強直発作、強直間代発作、失立発作に分類できる。
本稿ではてんかん発作の分類に従い解説する。
欠神発作[編集]
欠神発作の純粋な型は突然始まり数秒から30秒ほど持続し、突然終了する。
それまで行なっていた諸活動の中断、空虚な凝視、場合によっては短時間の眼球上転が認められる。
患者が話をしていれば話しは中断され、歩行中ならばその場に立ちすくみ、食事中ならば食物が口に運ばれる途中で止まる。
発作中に話しかけると場合によってはぶつぶつとつぶやくことはあるが普通は応答できない。
欠神発作には6つの亜型があり、意識障害だけを示すもの、意識障害に自動症をしめすもの、ミオクロニー要素を伴うもの、脱力要素をもつもの、強直要素をもつもの、自律神経要素をもつものが知られている。
各亜型は単独も複合もある。
いずれの発作型でも普通は発作中は規則正しい左右対称性の3Hz棘徐波複合が出現する。
2〜4Hz棘徐波のことや多棘徐波複合のこともある。
異常悩波は両側性である。
発作間欠期はふつう基礎律動は正常であるが、棘波、棘徐波のような突発波が出現することもある。
脳波異常は賦活されやすく過呼吸で容易に誘発される。
また睡眠やPentetrazolやbemegrideでも誘発できる。
非定型欠神発作は定型欠神発作よりも顕著な筋緊張変化を伴うことが多く、発作の起始、終了が突然ではないという特徴がある。
脳波も定型失神発作よりも多彩である。
ミオクロニー発作[編集]
ミオクロニー発作はミオクロニーけいれんと間代発作に分けられる。
ミオクロニーけいれん
ミオクロニーけいれんは、突然起こる短時間の衝撃様の筋収縮で全般性のこともあり、顔面、体幹、1つあるいはそれ以上の肢、個々の筋あるいは筋群に限局することもある。
この発作は急速に反復することも比較的孤立して出現することもある。
ふつうは意識を失わないがときに1〜2秒の意識消失を伴うことがある。
ミオクロニーけいれんは単独で起こることもあるが、同時に全般強直間代発作をもつものも多い。
ミオクロニーけいれんの発作時脳波としてふつうは多棘徐波あるいは時に棘徐波や鋭徐波が出現する。
発作間欠時にも発作時と同様に突発波が認められるため、脳波上突発波が認められても発作が起こっているとは限らない。
ミオクロニーけいれんは外的刺激によって誘発されやすい。
突然の音響、睡眠で誘発されるが光刺激に対して特に敏感である。
ミオクロニー発作をおこすてんかんには乳児良性ミオクロニーてんかん、若年ミオクロニーてんかん、ミオクロニー欠神てんかん、ミオクロニー失立てんかん、乳児重症ミオクロニーてんかんが知られている。
乳児良性ミオクロニーてんかんは1〜2歳に起こり睡眠初期に全般性棘徐波の短い群発が認められる。
若年ミオクロニーてんかん(衝撃小発作)は思春期に起こり発作間欠期、発作時は周波数の速い全般性棘徐波あるいは多棘徐波である。
光過敏性であることが多い。
ミオクロニー欠神てんかんでは小児欠神てんかんと同様な両側同期性、対称性の3Hz棘徐波が出現する。
ミオクロニー失立てんかんでは最初は4〜7Hzの律動の他は正常であるが不規則性棘徐波あるいは多棘徐波を示す。
乳児重症ミオクロニーてんかんでは全般性あるいは一側性の間代発作、ミオクロニーけいれんをもち、脳波は全般性棘徐波、多棘徐波、焦点性異常、光過敏性を示し極めて難治性である。
間代発作
間代発作はミオクロニーけいれんが律動的に反復するものである。
発作時脳波は10Hz以上の速波と徐波、場合によっては棘徐波であり発作間欠期には棘徐波あるいは多棘徐波が出現する。
ミオクローヌスてんかん
ミオクロニー発作と区別が必要な用語である。
初期はミオクロニー発作と区別がつきにくいがミオクローヌスてんかんは症候群であり、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症の若年型がこの症候群を呈する。
ミオクロニーけいれん、全身性けいれん、認知症などを示す。
強直発作[編集]
数秒程度の比較的短時間の強直状態が起こる発作であり、意識はふつう障害されるが回復ははやい。
ふつうは眼球や頭部が一側に偏位し、胸部の強直けいれんで呼吸が停止することがある。
乳幼児期てんかんに多く、代表疾患はウエスト症候群とレノックスガストー症候群である。
ウエスト症候群は発作時は低振幅速波ないし脳波の脱同期、間欠期はヒプスアリスミアが認められる。
レノックスガストー症候群は発作時は20Hz前後の速波性同期波や漸増律動が認められ間欠期は鋭徐波が多少とも律動的な発射で出現する。
強直間代発作[編集]
強直間代発作にて特発性全般性てんかんによるものと症候性全般性てんかんによるものとがある。
部分発作が発展して二次的に全般化して強直間代発作を示すこともある。
従来は部分発作の二次性全般化による発作も強直間代発作とし、部分発作の症状を前兆として扱っていたが、国際分類では二次性全般化はあくまで部分発作として扱い、最初から全般性にはじまる強直間代発作と区別している。
患者の一部は発作に先立ち形容しがたい予告を体験するが、大部分の患者ではなんら予告症状なしに意識を失う。
突然急激な強直性筋収縮が起こり、地上に倒れ、舌を噛んだり、失禁したりする。
チアノーゼが起こることもある。
その後間代けいれん段階に移行する。
間代けいれん後、筋弛緩し意識障害となる。
発作時は10Hzあるいはそれ以上の律動波が強直期の間は次第に周波数を減じ振幅を増やし、間代期になると徐波によって中断されるというパターンをとる。
発作間欠期には多棘徐波あるいは棘徐波、鋭徐波発射が認められる。
全般強直間代発作だけを持つ患者では他の発作型に比べて突発波の出現率が最も低く、1952年のギブスの検討では安静時22%、睡眠時46%にしか突発波は認められなかった。
脱力発作[編集]
脱力発作とは筋緊張の突然の減弱が起こるものである。
部分的で頭部が前にたれ下顎がゆるんだり、四肢の一つがだらりとしたりする場合もある。
すべての筋緊張がカタレプシー様に消失して地上に倒れれてしまったりする。
これらの発作が極めて短い時は転倒発作という。
意識は消失するとしても短い。
持続が長い脱力発作では律動的、連続的に弛緩が進行するという形で進行する。
欠神発作の症状として起こることもある。
発作時脳波は多棘徐波、平坦化あるいは低振幅速波が出現する。
発作間欠期は多棘徐波が出現する。
認知症の脳波[編集]
アルツハイマー型認知症の患者では脳波は以下のように推移することが知られている。
コリンエステラーゼ阻害薬によって徐波が減少することが知られている。
正常波形
α波の貧困化、θ波混在
低〜中振幅θ波主体の徐波
中〜高振幅θ、δ波にδバーストを伴う大徐波
大徐波の低振幅、不規則化
平坦化