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国際テロ組織…国際犯罪…テロリズム 3

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? テロリズムの定義をめぐる問題

一般に、 法律理論上の主要な問題点として以下が指摘されている。

1 テロリズムと刑法犯との区別

テロリズムの手段は、 刑法犯と重なっていると考えられる。 それにもかかわらず、 テロリズムの手段としての行為が、 殺人や暴行や放火のような通常の国内の犯罪としてではなく、 なぜテロ行為として取り扱われ、 分類される必要があるのか。

また、 刑法犯等とテロ行為とには、共通部分があるにもかかわらず、 例えば、 一連のハイジャック関連の条約のように、 テロリストが実施する暴力については、 特別な条約がある。

テロリズムは、 なぜ、 現在の刑法犯罪とは別に取り扱われるべきなのかについて説明が必要であろう。

先に述べたように、 テロリストが行うような行為は、 殺人や暴行などを規制する各国の刑法やその他の特別法等の国内法により処罰することが可能である。

刑法等の殺人は、 殺人を行ったことそれ自体が重視されるが、 テロリズムにあっては、 行為の目的、 動機が客観的な法益侵害以上に重視され、 目的に政治性等があれば、テロリズムとされる。

例えば、 9.11同時多発テロリズム事件における、 ニューヨークの世界貿易センタービルに対する攻撃は、 施設の破壊およびそれに伴う殺人である。

もし、 ハイジャック犯の一人でも生存していたならば、 殺人犯として訴追することが可能だろう。

しかし、 動機として政治的な目的があったとすれば、 それはテロリズムとなるのである。

しかし、 これまで、 いかなる集団、 人間も、自らをテロリストと名乗るようなことはほとんどなかった。

レファレンス 2005.10

テロリズムの定義47

タウンゼント 前掲書, pp.10-11.

松葉 前掲論文, pp.70-71.

テロリストという名称は、 他の人たちからの命名である。

特に国家が、 暴力的な敵対者にこの 「テロリスト」 のレッテルを貼ることが多いという(28)。

国家は、 特定の組織にテロリストのレッテルを貼り、 その構成員を違法な状態にし、 爆弾の所持や人質をとる行為などテロ行為の一覧表を作成した。

しかし、 そうした一覧表に列挙された行為の多くは、 刑法上すでに犯罪行為とされている。

このように考えると、 テロリズムは、 ある特定の行為を指すと考えるよりも、 むしろそれに対応する外部の人たちの心理状態をさしているといえるだろう(29)。

さらに、 国家は、 特に犯罪者の知られざる私的な動機を理由とする通常の犯罪よりも、 テロを厳しく罰したいと願っているのではないかと考える人もいる(30)。

以上のような理由から、 刑法犯罪とテロリズムを明確に分離し、 厳密な定義をつくるということは、 雲を掴むような作業となるが、 そのような困難な作業の代わりに、 一般的に 「テロリズム的」 とみなされるような行為を類型化する方に意味があると主張する者もいる。

だが、 行為を類型化し、 そのリストを作ろうとしてもすぐに行き詰まる。

つまり、 あまりにも多くの行為が、 テロリズムに特有でなく、 軍事的行為や犯罪行為と重複するのである。

結局のところ、テロリズムの要諦は、 その現象面に現れる特徴的行為よりも、 テロリストが、 心の中で意図した政治的な動機にあるといえるだろう(31)。


2 テロリズムと戦争法規

「はじめに」 で述べたように、 戦争とテロリズムとは、 類似した点がある。

しかし、 テロリズムに戦争法規の適用があるかどうかについては議論がある。

以下では、 テロリズムと戦争の類似点、 相違点を見た上で、 戦争法規の適用の可否に関する議論を紹介する。


標 的

戦争は、 テロリズムと同様に、 非戦闘員に対しても大きな恐怖を引き起こす。

時には、 国家の戦闘員によって非戦闘員に対して、 テロリズムのような暴力が行われることもある。

第二次世界大戦中のドレスデンやハンブルグに対する空襲などがこれにあたる。

軍隊は、 戦争を行っているときに、 しばしば戦争法規を無視し、 市民に対し暴力を行使することもあるが、 このような行為にテロリズムというレッテルが貼られることはほとんどない。

軍隊の暴力とテロリズムの間の、 一般に共通する区別は、 現在のテロリズムの標的が、 首尾一貫して非戦闘員であるということである。

軍隊は、 主として敵の軍隊と戦うが、 例外的に非戦闘員も標的になってしまうことがある(32)。

ゲリラとの違い

戦争とテロリズムとの相違は、 戦争は国家が行うもので、 テロリズムは、 正面から国家に抵抗できない弱者の抵抗手段であるという意見もレファレンス 2005.1048

「テロという概念そのものに強い否定的含意があることはあきらかである。 近代テロリズムの出発点であるフランス革命時のジャコバン等による恐怖政治には、 否定的意味はなかった。 (中略)しかし、 ロベスピエールらが打倒され、 エドモンド・パークらによって恐怖政治に否定的な評価が与えられてから後、 テロには否定的な意味が与えられるようになった。」 (松葉 前掲論文, p.69.)

タウンゼント 前掲書, pp.3-4.

Christian Tomuschat, "Comments on the Presentation by Christian Walter," Christian Walter.et al.,Terrorism as a Challenge for National and International Law:Security versus Liberty, New York:Springer, 2003, p.45.

Ibid., pp.6-7.

タウンゼント 前掲書, pp.9-10.

ある。

しかし、 弱者の抵抗手段には、 テロリズム以外にもゲリラという方法もある。

ゲリラとは、 小さな勢力が、 大きな目標を達成するため、より大きな勢力に対し組織的な暴力行為を行うことをいうので、 しばしばテロリズムと混同される。

しかし、 テロリズムと対照的に、 ゲリラは軍隊を標的にしており、 一般の支持を増大させるため、 市民を標的にすることはほとんどない。

確かに、 ゲリラ戦は軍事法規上認められている戦闘方法ではない。

また、 ゲリラは、 国家の軍隊と戦うが、 非戦闘員を攻撃するということはほとんどない。
どちらかといえば、 地域の住民、 非戦闘員と結びついており、 それらの支援を受けている。

ところが、 テロリズムは、 ゲリラのように軍隊との戦闘を伴わない。

テロリストは、 標的にした対象が自己を防衛することが不可能になるような方法で攻撃する。

このような理由から、 ゲリラは、 テロリズムというよりも軍事戦略の一つとして考えられている。

一般の人たちは、 テロリストが選択的でなく無差別的に攻撃するその姿勢に印象づけられ、 その結果、 恐怖を抱くのである(33)。

また、 テロリスト集団は暗殺や誘拐、 ハイジャックなどを行うが、 これらは通常の軍事紛争ではめったに使われないことから、 テロ行為の類型化には確かに一定の意味があるかもしれない。

テロリストも、 それら類型化された特定の暴力をテロリズムの証しにしているようである。


テロリストへの戦争法規の適用

テロリストに対して、 戦争法規を適用できるかどうかについては意見が分かれている。

例えば、 次のような意見がある。

「国際人道法」 が定める交戦法規上の、 戦争犠牲者保護に関する諸条約上の原則が、 国際紛争に至らない武力紛争 (=非国際的紛争) の参加者にも適用され得る点を見れば、 大きな武力紛争にも小規模の武力衝突にも、 戦争法規が適用され得ると考えることができる。

仮に、 これに戦争法規が適用されないとすれば、 小規模の武力紛争は、 一層残酷になってもやむを得ないことになる。

したがって、 ある行為が戦争法規の適用可能なレベルに達すれば、 これらのものにも戦争法規を適用することが可能である。

これらの者がテロリストと呼ばれるかどうか、 戦争法規違反行為に従事していた軍人であるかどうかに関係ない。

これらの者が戦争法規違反行為を犯せば、 その理由による責任を問われ、 これらの者が逮捕された場合は捕虜の待遇を与えられることになる(34)。

このような見解に対しては次のような反対意見がある。

武力紛争に関する法が、 テロリストおよびその行動に適用されるかどうかについては、 何ら実定法上の規定はない。

内戦の場合に、 刑法規定ではなくて捕虜の取扱いに関する原則や対立勢力による地域支配に関する原則が適用されるかどうか、 明確な規定が欠けている。

国際人道法の適用拡大を民族解放戦争まで認めたということはできるが、 テロリズムのような、 武力紛争に至らざる暴力状況への国際人道法適用の拡大については証拠がない。

テロリズムについて、 一般的に是認された定義がないことが、 テロリズムに対する戦争法規適用についての問題を特に困難にしているが、テロリスト組織が戦争法規の適用を受けてこれを遵守するというのであれば、 この組織は、 法的な意味ではテロリスト組織といえないことになると思われる(35)。

また、 テロリストに戦争法規は適用されないが、 次のような問題が残るという意見がある。

レファレンス 2005.10

テロリズムの定義49

同上, pp.8-9.

本間浩 「戦争法規はテロリストに適用されるべきか」 『レファレンス』 439号, 1987.8, pp.125-126.

同上, p.126.
一つは民族解放闘争、 民族自決権との関係、
もう一つは、 政治犯罪人引渡原則、 または庇護原則との関係である。

テロリズムが民族解放闘争または民族自決権の行使の一環として行われたとの理由で、 テロリストの名のもとに刑罰の待っている国へ引き渡すべきでないというようなイデオロギー的見解が世界の一部で聞かれる限り、 テロリズムの制圧は困難であり、 テロリストに対する戦争法規適用は意味がない(36)。

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