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鼻疽-glanders 検出マニュアル 国立感染症研究所

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鼻疽 - 国立感染症研究所

http://www.nih.go.jp/niid/images
http://p218.pctrans.mobile.yahoo-net.jp/fweb/0508YWbnhN02dtyo/0?_jig_=http%3A%2F%2Fwww.nih.go.jp%2Fniid%2Fimages%2Flab-manual%2Fbmallei-2.pdf&_jig_keyword_=%95%40%E1s&_jig_done_=http%3A%2F%2Fsearch.mobile.yahoo.co.jp%2Fp%2Fsearch%2Fonesearch%3Ffr%3Dm_top_y%26p%3D%2595%2540%25E1s&_jig_source_=srch&guid=on



病原体検出マニュアル

鼻疽 (glanders)

平成 23年 8月

1. 鼻疽/Glanders1,2,3)

鼻疽は鼻疽菌(Burkholderia mallei)が感染することによって起きる感染症である。

B. malleiはグラム陰性ブドウ糖非発酵短桿菌で、べん毛をもたず運動性がない。

主にウマ、ロバなどに感染し、種特異性が高い。

類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)と異なり土壌中などの環境中で菌が生存することはできない。

このため環境中の菌から感染が起こる B. pseudomalleiと異なりこの経路による感染はない。

B. malleiは患畜の膿などからヒトへ感染することがあり、人畜共通感染症である。

B. malleiは感染症法で特定病原体第三種に指定されておりバイオセーフティーレベルは BSL3である。

このため、適切な設備を有し、承認を得た機関の BSL3実験室でしか取り扱うことができない。

B. malleiは過去に生物兵器として使用された経緯もあり、現在も生物兵器としての使用が懸念される菌種である。

CDC category Bに指定される細菌である。

ヒトでの鼻疽の発生はアメリカで 2000 年に実験室感染と考えられる 1 例があるが、ほとんど報告が無い。

鼻疽に特徴的な症状はない。

吸入感染の場合には肺炎や臓器膿瘍、創傷感染の場合には皮膚膿瘍、リンパ節炎などを起こす。

播腫性疾患である。

症状が急速に進行し、敗血症に至った場合、発症から数日で死亡することもある。

B. pseudomalleiの感染によって起こる類鼻疽と比較して、鼻疽では化膿性膿瘍が多く見られる。


2.検査に関する注意事項

1)検体(臨床検体および臨床分離株)の取り扱い 鼻疽が疑われる患者の検体は、血液、膿、呼吸器分泌物など様々である。

検体は防護手袋、マスクなどの保護器具を使用して取り扱い、作業は BSL2実験室内の安全キャビネットで行う。

B. malleiは特定病原体第三種であるため、B. malleiであると同定されたのちは 7日以内に保健所を通じて都道府県知事に届出が必要である。

また、認可された施設を持たない検査室などでは検査終了時まで一時的に菌株を保管することができるが、厳重に密閉した上で施錠できる場所に保管する。

-80 に保管することが望ましい。

滅菌処理を行う場合には 10 日以内に処理を行わなければならない。

2)検体の輸送方法 鼻疽が疑われる臨床検体は、WHO の「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス」に基づき、国連規格の容器を用いて適切な方法で梱包する。

検体はドライアイス詰めで輸送することが望ましい。

感染性物質であることを明示し、ゆうパックにて輸送する。

B. malleiが疑われる臨床分離株を接種した寒天培地は常温にて上記と同様にゆうパックで輸送する。

分離された菌株が B. malleiであると同定された場合には、この方法で輸送することができない。

感染症法に基づき特定病原体第三種の輸送規定に基づいて、都道府県公安委員会に届出を行い、運搬証明書の交付を受けた上で輸送を行う。

((参考;感 染 症 法 に 基 づ く 特 定 病 原 体 等 の 管 理 規 制 に つ い て URL; http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou17/03.html))


3.検査方法

B. malleiについてはヒトでの発生例、同定例が非常に少ない。

B. mallei同定のゴールドスタンダードは培養法であるが、B. malleiに固有の特徴が少ないため、同定は難しいとされる。

このため、培養法にシークエンシング法を併用し、Burkholderia属であることを確認した後に、培養法から B. malleiであると同定を行った例が報告されている 4)。

1)分離培養法 現在、B. mallei同定法のゴールドスタンダードは培養法である。

B. malleiは 5%羊血液寒天培地、チョコレート寒天培地 II、ミューラーヒントン培地などの一般に臨床材料に用いる培地で生育する。

マッコンキー培地では生育しないこともあり、生育する場合でも増殖が非常に遅い 5)。

培養は、好気性条件下、至適培養温度は 37 (31 から 37 までの温度では増殖可能)。

B. mallei は培養開始 72h くらいからコロニーが形成され、1週間程度で大きなコロニーとなる。

B. malleiは 42 では増殖せず B. pseudomalleiとの区別ができる。

また、コロニー形態はスムースで皺状にはならない。グラム染色では染色が弱い。

安全ピン様の双極性を示すとされる。

B. pseudomalleiと異なり、培養時のにおいはない 1,6,7)。

図1.B. mallei のコロニー

Mueller-Hinton 寒天培地 35 で一週間培養。

この写真のコロニーは大きいもので直径 3mm程度。

2)生化学的性状試験

B. malleiは市販のキットAPI 20 NEなどでは判定が不確実で、0-60%程度である。

また、細菌自動同定機器では通常、正確に同定ができない。

生化学試験についても不定であるものが多く、確実なものとしては、運動性が無いという点と、42 では発育しないという点である。

カタラーゼは陰性で、オキシダーゼは陽性とされる 8)。

3)遺伝子検出法

B. mallei の遺伝子検出法について、これまでに Real-time PCR 法 9)、Multiplex PCR法 10)などの報告があるが、いずれも研究的なものであり、実用化の域にはいたっていない。

また、シークエンシング法についても、B. pseudomalleiを含む Burkholderia属は遺伝子の相同性が非常に高いため、この方法のみで B. malleiと同定するのは難しい。

遺伝子検出法を試みる際に陽性対照として用いる DNA が必要な場合、国立感染症研究所・細菌第二部より分与可能。

4)抗体検出法 現在ヒトに対して適用できる方法はない。


4.参考情報

1) 届出基準
28 鼻疽

(1) 定義 鼻疽菌(Burkholderia mallei)による感染症である。

(2) 臨床的特徴 主な感染経路は、ウマの分泌物の吸入あるいはそれらとの接触感染である。

潜伏期間は通常 1〜14日であるが、まれに年余にわたることもある。

初発症状は 発熱、頭痛などであるが、重篤な敗血症性ショックを生じやすい。

特徴的な局所症状はほとんどないが、皮膚に潰瘍を形成することもある。

また、肺炎(急性壊 死性肺炎)や肺膿瘍を発症する例もある。

慢性感染の場合は、皮下、筋肉、腹部臓器などに膿瘍を形成する。

(3) 届出基準 ア 患者(確定例) 医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から鼻疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鼻疽患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

イ 無症状病原体保有者 医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鼻疽の無症状病原体保有者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

ウ 感染症死亡者の死体 医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鼻疽が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鼻疽により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。

エ 感染症死亡疑い者の死体 医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、鼻疽により死亡したと疑われる場合には、法第12条第1項の規定による届出を直ちに行わなければならない。

検査方法 検査材料 分離・同定による病原体の検出 PCR法による病原体の遺伝子の検出

皮膚病変組織・膿・喀痰・咽頭拭い液・血液


5.参考文献

1) Dvorak DV., Zoonosis update; Glanders. Vet. Med. Today. Vol.233, No.4, August15, 570-577, 2008 2) Manual of clinical Microbiology1 9th edition 749-761 3) MMWR, June, 23, 2000 4) Srinivasan A., Glanders in a Military Research Microbiologist, N. Eng. J. Med., Vol.345, No.4, July, 256-258, 2001 5) Gilad J.: Burkholderia mallei and Burkholderia pseudomallei as Bioterrorism Agents: National Aspects of Emergenic Preparedness. IMAJ, No9. 499-503, 2007 6) IMAI, vol.9, 2007 7) Glanders; Farcy, malleus, Droes, CFSPH, 2007 8) Bossi A., Bichat Guidelines for The Clinical Management of Glanders and Melioidosis ans Bioterrorism-related Glanders and Melioidosis. Eurosurveillance, Vol.9, issue 12, http://www.eurosurveillance.org, 2004 9) Ulrich M.P., Using real-time PCR to specifically detect Burkholderia mallei. J. Med. Microb., 55. 551-559, 2006 10) Lee M-A., Detection and differentiation of Burkholderia pseudomallei, Burkholderia mallei and Burkholderia thailandensis by multiplex PCR. FEMS Imm
unol. and Med. Microb. 43. 413-417, 2005


6.執筆者 国立感染症研究所・細菌第二部 堀野敦子

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